空撮ラジコンヘリコプターの試験飛行

 f:id:yuki_tabata:20141017084126j:plain 3ヶ月ぶりの更新。調査研究や機材購入のメモとして活用していこうと考えて立ち上げたのに、全くやっていない。この3ヶ月の調査メモは別途アップすることにしよう。

 

 さて、昨日は授業が1限のみだったので、先日導入したDIJ社のカメラ搭載型ラジコンヘリコプター、Phantom 2 Vision+(http://www.dji.com/product/phantom-2-vision-plus)の試験飛行をする。

 都内某所で院生のN君との試験飛行だったが、いや、操縦が難しい。

 ラジコンヘリなど操縦したこともない二人がやったのだから、当たり前と言えば当たり前だが、離陸は良くても、着地が全然上手くいかない。タブレットでリアルタイムにカメラ画像も確認できるのだが、そんなものを見ている余裕が全くない。一度は木の枝にぶつけて、プロペラが折れてしまった。スペアプロペラがあったからよかったが、早速プロペラガードと着地用の大形の脚を発注する。 以下、ラジコンヘリの空撮では当たり前の事なのだろうけど、試験飛行で気付いた点をあげておく。次回の訓練の参考までに。

 

1.この機種が小さく軽いためかもしれないが、横風にもの凄く弱い。ただ真っ直ぐ上昇させて着陸する訓練なのだが、上昇するとすぐに横に動いてしまう(当日の風速を調べておけば良かった)。どのくらいの風速までなら遺構撮影ができるのか、データを集める必要あり。

 

2.おもちゃの様な見かけだが、前進、後進、旋回のスピードが想像以上に早い。コントロールの技量の問題なのだろうが、実際に調査に使う場合は、かなりゆっくり動かすつもりでないと、上手くいかないのだろう。よく練習すること。

 

3.操縦しながらの写真、ビデオ撮影が可能になっているが、調査のための空撮ならば一人ではなく最低二名で取り組むほうが良いだろう。操縦だけに集中しないと、大変なことになる。

 

4.ネットないしは保護シートなど、着地のためのサポート手段を至急開発すること。

 

 

f:id:yuki_tabata:20141017084130j:plain

 

f:id:yuki_tabata:20141017084137j:plain

 

f:id:yuki_tabata:20141017084135j:plain

 f:id:yuki_tabata:20141017084146j:plain

毎日新聞のコラム

前回の更新からだいぶ時間がたってしまった。反省。

 

さて、毎日新聞のコラム、「余録」に文化遺産に関する記事が掲載されていた。見過ごせないのでここに記録しておく。見過ごせない、というよりも、日本の大手メディアの見解として興味深い。11月に予定している文化遺産についての発表にも使おうと思うので、メモがわりに。

 

まずは全文引用。

 

 世界三大仏教遺跡といえば、カンボジアのアンコール、インドネシアのボロブドゥール、ミャンマーのバガンである。うち二つは20年以上前に世界遺産に登録されているが、バガンだけは「幻の世界遺産」のままだ▲11〜13世紀に栄えたバガン王国の都であり、イラワジ川中流域に2500以上の寺院やパゴダ(仏塔=ぶっとう)が点在する壮大な遺跡群だ。にもかかわらず登録から漏れてきたのはもっぱら政治的な事情による▲ミャンマーは1960年代以降、半世紀にわたって軍が国を支配する特異な体制が続いた。この間、傷んだ遺跡はセメントやしっくいで急ごしらえの修復がなされ、遺跡群の一角にはリゾートホテルや高さ60メートルの展望タワーが建設された▲軍事政権は96年にバガンを世界遺産に登録申請したが国連教育科学文化機関(ユネスコ)は応じなかった。文化財としての価値を損なうずさんな修復に加え、ホテルやタワーが歴史的景観を台無しにしていたからだ。閉鎖的な軍事政権との間ではまともな協議もできなかった▲ところが3年前に民政に移行して状況は一変する。観光開発をもくろむ政府はユネスコとの協力姿勢に転じ、先月、同国初の世界遺産が誕生した。紀元前2世紀から約1000年存在したピュー王国の遺跡だ。バガンの修復や保全でもユネスコの助言を受けることになった▲内戦で荒廃したアンコール遺跡の修復には上智大や早稲田大など日本の協力が大きかった。今では世界中から年間200万人以上の観光客が訪れる。歴史遺産は人類共通の財産だ。「幻」を現実にするため、優れた日本の修復技術がまた役立つだろう。

毎日新聞 2014年07月20日 第14版

 

以下、メモ

1.事実誤認と言えなくもないものが一つ。アンコールが世界三大仏教遺跡となっているが、どうカウントすべきか。

 アンコール、が「アンコール遺跡群」のことを指すのであれば、世界遺産リストのものでもあっても、遺跡群全体のことであっても、明らかに仏教の要素を含まないモニュメントのほうが数が多い。たとえば、観光ガイドブックに載っているような主要な遺跡40程度でも、その半数以上は非大乗仏教遺跡(ラフなカウント、あとで、『地球のあるきかた』などのガイドブックで確認し実数をあげておくこと)。

 また、14世紀以降に少なからぬヒンドゥー寺院、大乗仏教寺院は上座仏教の寺院になるが、その多くはそのまま現代まで寺院ないしは信仰の場として機能している。この事実をもってアンコール=三大仏教遺跡と呼ぶのならば、そもそもアンコールは「遺跡」ではなく、現役の「寺院」である。

 アンコール、が「アンコール・ワット(世界最大のビシュヌ派寺院)」のことを指すのであっても事情は同じ。

 ただし、日本におけるアンコールの一般的な受け取られかた(ツーリズムの対象としての認識)として「三大仏教遺跡」のひとつ、と表記したのであれば、それはそれで興味深い。

 

2.バガンについて。

 まず、もういちど本文を引用。「軍事政権は96年にバガンを世界遺産に登録申請したが国連教育科学文化機関(ユネスコ)は応じなかった。文化財としての価値を損なうずさんな修復に加え、ホテルやタワーが歴史的景観を台無しにしていたからだ。閉鎖的な軍事政権との間ではまともな協議もできなかった

 軍事政権下の修復に対する評価として、「文化財としての価値を損なうずさんな修復」であったというのは、ユネスコそして日本をはじめとする世界遺産条約批准国にとっての標準的なものであろう。

 軍事政権にたいする国際政治上の評価はどうであれ、これはビルマ人の精神的支柱たる寺院、仏蹟にたいする価値観を完全に無視した、いわば「グローバル=スタンダード」による一方的な評価。

 そもそも、東南アジアにある多くの「モニュメント」はツーリズム的な意味での遺跡=もはや建立当初の機能を果たさず、「よそもの」だけが観光資源として利用するようなもの、ではない。ほとんどのモニュメントは、「現役」である。

 上座仏教徒が圧倒的大多数であるビルマ人社会で、軍事政権下で国際社会から孤立しながらも、「自分たちのお寺を自分たちで綺麗にする」ことは、はたして「ずさん」と切り捨てられるような事であるのか。

 たとえそれがユネスコ的な意味での「文化遺産の正当性」を損なう修復であっても、「自分たちの手持ちのリソースで、自分たちの精神的支柱にたいして最大限の敬意を表してきた」とう点が評価がなぜ出来ないのか。

 価値観の多様性を認めることは、ユネスコも謳っている(宣言について原文をあたること)。

空撮用ラジコンヘリコプター

大部ブログの間隔があいてしまった。反省。

本来の備忘録として、空撮用のラジコンヘリコプターのことを書いておく。

カンボジアで遺跡調査をしていて、「ああ、あれがあったら」と思ったことは沢山あるけれど、その「あったらいいな」度のかなり高いもののひとつが空撮用のラジコンヘリだ。遺跡や調査区の全体写真は櫓をむりやり作ってもらって取っていたけれど、それだって遺跡によっては周りに櫓を組むための樹木がなく、椰子の木にのぼるとか、でなければあきらめていた。

 観光客向けのヘリをチャーターして空中写真をとっているチームもあるけれど、チャーター代だけで数百ドル以上するし、なにより彼の国の機器一般の整備状況を知っている身としては、そもそもヘリを飛ばすこと自体が恐ろしく、人に乗ってくれなどと言いたくないし、自分が乗るなんてまっぴらごめんだ。

 そうなるとラジコンヘリか凧による空中写真撮影しかないな、と思ってはいたけれど、値段(ヘリ)や講師招聘や技術習得にかかる時間(凧)を考えるとためらってしまい、導入に踏み切れていなかった。

 しかし先日、大学の大先輩でフォトジャーナリストの森枝さんがフェイスブックで気になるものを紹介されていた。

 中国はDIJ社のカメラ搭載型ラジコンヘリコプター、Phantom 2 Vision+だ。

 http://www.dji.com/product/phantom-2-vision-plus

 アマゾンで購入しても15万円以下で、空撮用ラジコンヘリとしては非常に低価格であるし、スマートフォンに映像を送ることができるので、ライブビューを確認しながら撮影できるという。

 早速購入を決意する。

 幸運なことに、今年度は科研の分担者としてあるていどの予算配分があり、これを購入してもカンボジアでなんとか調査ができそうだ。購入は6月以降になるだろうが、テストを何回か日本でやれば、カンボジアでも十分使えるだろう。

 そうそう、税関に引っかかるようなものでもなさそうだが、念のために購入までにそこら辺をしらべておこう。

メーリングリスト

 朝は家で書類仕事を片付け、昼前から研究室へ。家からバスと電車で片道約1時間。距離にして約20キロだから、これなら自転車でも十分通える距離。前々から考えている通り、季節限定にして自転車通勤に切り替えよう。この件は来週以降本格的に動くつもり。

 研究室では書架の整理は延期して、授業の準備と原稿書き。昨日申請しておいたメーリングリストの開設通知がきたので、さっそくゼミ生のメールアドレスを登録。メーリングリストの名前はIoannesかHieronymusにしようと思っていたのだけれど、キリスト教とは縁のない大学だし守護聖人の名前はやめにした。そういえば、学生としてであれ教員としてであれ、建学の精神にキリスト教がでてこない大学に所属するのはこれが初めてだ。

 いろいろ考えて、東南アジアのゼミらしくSarasvatiにした。この名称の意味がわからない学生には意味を調べる宿題を出すことにする。

 結局今日は書架の整理はできなかったが仕方がない。授業と原稿の合間を縫って、すこしずつ進めることにしよう。

研究室の立ち上げ

 早稲田への赴任を機にホームページを公開した。ついでに備忘録代わりにブログもはじめることにする。

 都内の大学としては相当にひろい研究室をもらったので、研究室の立ち上げ作業をずっとやっている。書籍の搬入は3月末で、自宅、実家、ICUにあったものをすべて部運び込んだが書架には余裕がある。まあ、じきに埋まってしまうんだろうけれど。

 ありがたいことにN先生より東南アジア関連の研究書・報告書を頂戴した。ほとんどが現地語で書かれていて、ヴェトナム語、タイ語のものがおおい。自分の持っているカンボジア語の文献をあわせるとかなりの量になる。カンボジア語は辞書を引き引き自分で、ヴェトナム語とタイ語についてはそれぞれ得意なかたにお願いして書誌情報と目次くらいは英訳し、教育・研究に役立てるつもり。

 本日、注文しておいたA3スキャナ・プリンタの複合機が届く。複合機、カラーレーザープリンタ、PCと一通り機材もそろい、これで何とか授業と研究が出来る状態になった。もう授業ははじまっているので、本当にぎりぎりのタイミング。

 PCは2007年に購入したロートルだが、複合機とプリンターはどちらも最新型で無線LAN対応。研究室がケーブルだらけにならずに済むのがありがたい。もっとも追加した書架の納入は二週間後だし、書籍もジャンル別に大まかに分類が終わっただけだから、まだまだ研究室の立ち上げ作業は続くのだろう。